はじめに

 高次脳機能障害のある方は注意力や記憶力、理解力の低下などによって、相手の話の意図を正確に理解することが難しくなります。また一方的に話しているうちに、本人自身が混乱してしまうこともあります。さらに自分の障害を認識することが難しく、感情のコントロール低下とあいまって、障害について指摘されると怒り出してしまうこともよく見受けられます。
 心理士はこのような高次脳機能障害の方に対して、認知訓練を行ったり、自分の障害を理解し対処できるように働きかけをします。そのためには高次脳機能障害の方が納得して課題に取り組めるように説明をする必要があります。
 平成24年に「高次脳機能障害者への説明」をテーマにリハビリテーション心理職会を通じてアンケートを実施しました。その中の、現場で効果のあった説明手法をまとめて「説明テクニック集」として出版することにしました。
 説明テクニックは「メタファー(比喩)」を利用した例え話と「その他」の2部構成となっています。お手元において参考にしていただくとともに、さらに高次脳機能障害の方に上手に伝わる説明テクニックに洗練していただけることを期待しています。